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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のMALPASOのレビュー・感想・評価

3.3
映画『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

僕は髪も仏も信じないので、巻き込まないください。祈って「幸せ」になれるならなんぼでも祈りますが。「幸せ」とは何かがまだわからない。

19世紀イタリアで実際に起きた世界で大論争になった事件。敬虔なユダヤ教一家の7歳の少年エドガルド・モルターラが、カトリック教会に連れ去られる。そして、エドガルドを取り戻すため、カトリックと両親の闘いが始まる。ここまで聞くと、輪廻転生から少年がチベットの高僧候補になる『リトル・ブッダ』を思い出すけど、だいぶ違う。これは諸々調べてから観ないとさっぱりわからない映画。

この映画、時代背景がわからないとさっぱりわからないと思う。
まず冒頭にエドガルドの家にやってくるのは異端審問警察。

父親が「金を盗むからクビにした家政婦がいた」と怪しむのは、カトリックの家政婦(乳母)が、病気がちだったエドガルドを死んで地獄に堕ちないように勝手に洗礼していたから。水かけて洗礼式を適当にしてもカトリックの仲間入りとされた。ローマ・カトリックはだれから洗礼を受けても有効で、受けた者はクリスチャンとなった。

冒頭の家族の言動は、なんらか事情はわかっているように見える。それは、160年前のイタリアは、教皇領、サルデーニャ王国領、シチリア王国、ナポリ王国などに分かれて、国家統一運動の機運が高まっていた時代。
教皇領から王国になったり、一夜で体制が変わっていた。そんな中、ユダヤ人は迫害もされていて、国の動きに翻弄されていた。だから、すぐに警察の目的もわかったんだと思う。父親が長男に「なるべく人を集めてくれ」と言うのは、世論(ユダヤ人)を味方につけるしかなす術がなく、抵抗できなかったから。
それもそのはずで、異端の取り締まりは、ローマ教皇ピウス9世の許可のもと行われていたから。
教皇を訴えただけでも異例の事だった。

舞台となったモデナは教皇領だったけど、3年後にはサルデーニャ王国の一部となった。エドガルド連れ去りを指示したカトリックの司祭は逮捕された。

宗教のもとに何をしてもいいのかって事や宗教って何とまで考える映画。

監督・脚本は、イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ。宣伝は、スピルバーグ監督が断念したを強調してるけど、7歳のエドガルドを演じる子役が見つからず困って断念しただけ。

原題『RAPITO』は『誘拐』
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