二瓶ちゃん

ポトフ 美食家と料理人の二瓶ちゃんのレビュー・感想・評価

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
4.1
世界のJBということで鑑賞。

GAGA Gaumont CURIOSA FILMS

【こころほどかれる】

うん。世間では名作なのだろうけど、完全にノット・フォー・ミーであった「ター」のように、料理のことはもうほぼ何言ってるかわからなかった。

でも、「ボイリング・ポイント」に劣らずとも(あそこまでのスピーディーさは求められないが)、すごく料理シーンに見応えがあったし、ルックが良くて、最後までお腹空かせながら飽きずに観てしまった。

一応物語としての起伏もあるにはあるが、ただ登場人物が台本の上を踊るだけ。悪い映画ではないと思うけど、絶賛して人に勧めたい!とはならないかも。では、何のための映画だったのか、ということを無駄に短いエンドロールで考えていたので以下に。

多分言葉を介さないコミュニケーションの映画なのではないかと。夫婦間の料理や性行為、または視線を通じたコミュニケーションがすごく印象に残っている。

ウージェニーは結局ああなってしまうけど、やっぱり夫婦だからって全て通じ合うことを求められるんじゃなくて、料理人としての彼女を生きたかったんだろうかな。本当に死因は不明だけど。

もう悉く料理が出てくる映画だと思うし、もうその描写だけで7割はいってそうな映画だけど、思ってたより調味料が出てこなくて素材勝負な感じだった。下味として塩コショウとかは使われてたけど、他はとにかくワイン入れまくっていたことしか覚えていない。このオーガニックさは純朴な映画風景ともマッチするのかも。虫の音や鳥の音飛び交ってた。

時代設定がいつなのかは分からないけど、とにかく現代の物語としてみても、技術的な意味で一切の違和感がなかった。

コミュニケーションの目的は意思伝達なんだろうけど、その先にあるのは心をほどき合うことだと個人的には思っている。

決してテンポ感が良いとは言えない作品かもしれないが、コミュニケーションや狂気とも言えるほどまでの料理描写の徹底で、我々観客の心にそーっと忍び寄ってくる。

そうして、心に忍び寄ってきた映画は、我々の心をほどき、この映画の中に生活の発見をさせる。果たして私が普段食べてるものたちって、どれだけの手間をかけて作られたものなのだろうか/ワイン飲みたい/早く夕飯食べたい/のり弁438円ってこの人たち食べなさそう/男の人料理人の皆さんに冷たすぎやしないか/この作品の美術さん大変だろうな、などなど。

色々書いてしまって、何だかまとまらないけど、正直何を感じるかは自由な映画だと思う。何を作っているかは分からないが、一つ残さずうまそうだったし、芸術的で性的だった、そしてなによりjuliette binoche可愛い、ということでこの評価。

人生の秋