美味しい料理と大人の恋と人生と。
お料理を芸術にまで昇華させたトラン・アン・ユン監督の美意識が冴え渡る素敵な作品でした。
美食家ドダン（ブノワ・マジメル）と一緒に暮らす料理人ウージェニー（ジュリエット・ビノシュ）がひたすらお料理を作ります。
丁寧に調理される食材、流れるような作業工程、手元を追う流麗なカメラワーク、まるで画面から香りまでしてきそうで、観ているだけで幸せ。お料理の監修はピエール・ガニェール。どのソースも手が込んで美味しそうだし、ワインとのマリアージュも贅沢♪
手の込んだお料理もいいけど、みんなで乱暴にパンをちぎって食べたり、2人だけでワインを飲む時間が愛おしい。
料理の音や食べる音、鳥のさえずりなど、自然の音が心地よく響く。自然光の美しい映像、センスのいい広い厨房、きちんと磨かれている鍋や美しい食器たち、ワインの蘊蓄も嫌味ではない。
ブノワ・マジメルとビノシュのカップルがとてもお似合い。元リアルカップルのせいかな。美食の秋に合わせたように、人生の晩秋になる前に夫婦になる2人。
「すでに持っているものを求め続けるのが幸せだ」
心をくすぐる言葉も多く散りばめられています。
観終わって多幸感と寂寥感と空腹感を同時に味わえる、食いしん坊にとっては至福の一品でした。
