おそらく料理とは哲学なのだろう。メニューには、それを考えた人と料理人とで織りなされた思想とか理念といったものが浮かび上がる。そのことを理解できる者に供される極上の食。映画は始まりからして圧巻。食に関する映画はいくつもあるけれど、おそらくどれとも違う、唯一無二の映画。様々な食材。その食材それぞれの持つ命が、いちばん生かされるかたちで料理されているのであろうことが映像から伝わってくる。湯気は絶えずたちのぼり、暖炉の火は絶えず燃え続け、そのなかでかわされる“merci”という言葉の美しさ。慈愛に満ちている。