さよこ

落下の解剖学のさよこのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
【Fan's Voice試写会で鑑賞🎬】
試写会アフタートークは公開後に追記します📝

🐕全体の感想
人間描写が繊細で惹きつけられた。また裁判シーンに至ってはワンカットが長尺でカメラの構図もドキュメンタリーのような撮り方でとても良かった。まるで傍聴席にいるかのようなリアリティがあった。

🐕大事なこと
ワンちゃんは無事です🫶
※ツラいシーンはあるので注意🙏

🐕夫婦の序列
夫婦の諍いのなかに出てくる「浮気」「稼ぎ頭」「子育て」「DV」「鬱」などのキーワードのうち、こっちが夫側であっちが妻側で…となんとなく思い浮かべるイメージを、見事にアレンジして現代的な夫婦を描いているのも印象的だった。そして夫婦で話し合いが持たれた「子育てと仕事の両立」については妻側の意見をうんうんと頷きながら聞いてた。世間からみたら母性がないように見えるかもしれないけど、二人の子どもだし、完全に役割を半分ずっこにするのは難しいよね。

🐕子どもへの接し方
目に障害を持つ子どもに対して、両親たちは過保護にしすぎず、1人(&犬)でお散歩へ自由に行かせるなど健常者と同じ扱いをしているのが印象的だった。目が見えていても雪山は滑りやすく、自分なんかはどんくさく転んでしまう自信があるので、この子は転んだりしないか劇中ヒヤヒヤしながら見ていた。さらに裁判シーンでは、証言台に立つ主人公の息子(11才)に対して、検察官や裁判官は大人と接するように対等な目線で質問をしているように見えた。どちらも子どもだからといって軽くあしらったりせず、年齢的な配慮をしつつも子どもを尊重しているシーンが多く、とても良かった。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
(公開後に追記します🙏)
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🐕印象に残った台詞
「裁判で勝ったら見返りがあると思っていた」

🐕夫の振る舞い
夫の移住計画が見事に計画性がなくて、これは妻がしっかりせねばと思った。妻は移住にはOKしたけど、ペンションを始めることには反対も賛成もしてなさそうなんだよね。あなたがしたいならお好きにどうぞのスタンスだと思う。なので改築を頑張ってオープンできたとしても今度はペンションのお客さんへの対応でてんてこ舞いになるだろうし(そして妻はきっと手伝わない)、いずれにしても執筆できる環境にはならないと思う。それならもっと実家に近いところか、子どもを預けられる都市部にいって、自分の時間を確保するほうが良いんじゃないかな…などとぼんやり思った。著名な作家ならスランプに陥ることもあるだろうけど、この夫側はまだデビューもしていないし、誰かに頼まれて執筆をしなきゃいけない環境でもない。なのに書けないってヒス起こされても、それはあなたのなかで書きたいものが定まってないんじゃないの?締め切りがあるわけじゃないんだし、内観が足りないんじゃない?て思っちゃう。違うのかな。

🐕妻の振る舞い
良くも悪くも自分主義って感じで、格好良くもあり、非情にも見えた。たぶん家庭を持つのが向いてないタイプなんじゃないかな。子どもはしっかり妻の血筋を引いてるように思えた場面があって、ゾワっとした。相手のことを大事に思ってるけど、それ以上に自分が大事っていうか。あの年齢であってもさすがに犬に大量のアスピリンを飲ませたらダメってなんとなく分かるだろ…。

🐕無実の証明
裁判シーンでは赤マントの男がとても意地悪な質問を何度もする。ときには決めつけられ、こじつけのような話法を展開される。こういうシーンは、以前なら、なんて意地悪な…!てぷんぷんしながら観たりしてたんだけど、今回は「本当に潔白ならどんな質問にも正攻法で打ち返せるはず」と思いながら見てた。限りなくグレーである以上、ボロを出させるためにワザと煽ってるんだなと思った。赤マントの男は裁判を進めるうえでとても必要な憎まれ役なんだなって。世の中の赤マントさん、お疲れさまです🙏

🐕少年の視力
序盤は少年の視力についてほとんど説明がなかったから盲目だと思ってしまって若干混乱した。完全に見えないわけじゃないから人の顔を見ながら会話もするし、大きな楽譜でピアノも弾く。家が柱や階段だらけで住みづらそう、父親は気遣いゼロかって思っちゃったけど、家のなかならそこまで不便ってわけでもないのかな。

🐕その他、いろいろ
・少年の証言の曖昧さは心のゆらぎ。
・夫婦喧嘩のテープ、生々しくて怖かった。
・夫婦喧嘩の内容、子どもに聞かせちゃダメ…
・妻が冷静に話してあげてるうちに引きなよ…
・少年の保護管?みたいな人いるけど、犯人かもしれない人の家で一緒に過ごすの凄いな、ビビる、、
・アイディアを奪った27ページよりも、壮大な300ページのほうが凄いだろ。むしろ良いアイディアを活かせない夫の作家性の問題じゃない…?無許可はダメだけどボツ案だったら拾ってもいい気がするんだけど、そんなことない?
・誰が犯人か?はアフタートークレポで🙊
(自分の予想は外れちゃいました)

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📝アフタートークレポート
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この日の登壇は、立田敦子氏と森直人氏でした。制作エピソードを中心にレポします🙌

📝作品のオマージュ
本作は主に3つの映画と共通点があり、一つは1950年代に公開された『或る殺人』で、劇中の半分以上が法廷劇になっている。ストーリーは妻を性的暴行した加害者を射殺した夫が裁判にかけられるというもの。その法定シーンでの展開は本作に共通しているところがある。もう一つは『アマンダ・ノックス』で、人間の不可解な側面つまり、人間の行動は一貫しないという側面であったり、こちらも事件の当事者が帰国後に小説を発表するなど実体験をもとにした書籍を出版している。そしてもう一つは『氷の微笑』で、こちらは主人公である女性作家が自分の自分の体験を小説にしている点であったり、性に奔放な点、バイセクシャルな側面を持ち合わせている点が共通している。※ただし監督は氷の微笑をオマージュしているとは公言しておらず、登壇した森直人氏の私見となる。

📝制作エピソード
この事件の謎を解くヒントとして、監督曰く「回想シーンは一度も使っていない」とのこと。つまり、回想シーンに思える例の場面は、あくまで''証言の映像化''という構図にしている。また極端に音が少なく、日常生活で聞こえる音以外に追加していないのは監督の演出の1つでもあり「写真はごまかせるけど音はごまかせない。この映画にとって音だけが本物だからサウンドデザインをあえてしない選択をし、音を作り込まなかった」と仰っていたそう。

📝登壇者による解説
・出演した🐕は本作でパルム・ドッグ賞を受賞
・🐕の名前はスヌープでつまりSnoop Dogg!
・最初と最後に🐕が出てくる
・中盤では主人公のところに寄り付かなかったのに裁判が終わって帰宅したら🐕が寄り添っている
・裁判シーンは時折、低い位置からのアングルとなり、これは🐕目線でのカメラ構図ではないか。
・冒頭に流れる陽気な音楽は、50セントの『P.I.M.P.』(インストver)で、明るい曲調だけど夫の怒りを表している。
・少年の証言が変わっているのは『母親と自分にとって何がベストなのか?』の問いに対して、この2年間で少年が成長してることの表れでもある。また時間の経過を表すのに少年の弾くピアノの上達もある。
・これまでの夫婦像とは男女の役割が逆になっていつつ、かと思えば夫の故郷に一緒についていくなど新旧の価値観が入り混じっている。

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【余談】
試写会鑑賞後、50セント『P.I.M.P.』を検索。
https://youtu.be/aIe76kMo7gI?si=lfGGngyHJtxYEoVc
これとは別にft.Snoop Dogg verもあるみたいで、🐕の名前がSnoopだったことからも、映画の制作陣はもしかして50セントのファンなんじゃ…と思ったり。

【余談2】
自分は最後まで自殺の可能性(自暴自棄になって自分で頭を殴ってから転落)を信じてたんだけど、どうやらアフタートークを聞くに、妻がやったぽくて自分は探偵にはなれないなって思った😇
さよこ

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