mさん

落下の解剖学のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

キャッチコピーとかいかにも法廷ミステリーみたいな感じするけど全然違って、
要は子が親を信じることができるのか?
それを客観的意見が飛び交い
他者により当人のイメージが作り上げられていく裁判というシステムを使ってやった
ヒューマンドラマだった。
なんかジャッジ裁かれざる判事を見た時の感覚。なんとなく見れたけど全然ミステリーやどんでん返しなかったなー的な。

見終わった直後は
ずーっと会話を寄りで映して
なんか声と表情しか見えない映画で
映像として面白くないな
最後も無罪でヌルッと終わったし、
なんだかな〜と思ったけど
この映画を息子ダニエルの映画として見ると面白かったなと思えた。

はじめ息子は母親が容疑者になった時
目が見えないハンデを庇うかのように
強気に自分の感覚を信じて
結果誤った証言をしてしまう。
そのせいで母親に迷惑をかけてしまった彼は、母から本当のことだけを話してと言われてしまう。でも彼は悩む。なぜなら彼は目が見えず、彼が見る世界に、本当に確実な情報などはないからだ。だから母親に迷惑をかけないように黙って、傍聴席に行くことを選ぶ。ただことが進んでいく様子をじっと口出しせずに見ていく。彼がじっと黙ったまま話を聞く姿に僕ら観客の映画に対する姿勢がリンクして共感できるようになってるのが上手い。

なすすべもなく母親のイメージが作り上げられていく。ヒステリックで、息子に興味がなくて、自分勝手で、快楽主義者で、そう言ったマイナスなイメージが作り上げられていく中、ついに彼が最後に発言することになる。
彼は結局真実や確たる証拠を述べたわけではないけど、それでも本当に自分の頭でしっかり考えて、論理的な筋道を立てて、その上で話した。それまで他の人が話すシーンでは回想は出てこず、唯一出たシーンは記録された音声の部分だった。おそらく回想が出るかどうかはその情報がどれだけ真実味があるかどうかだと思う。記録された音声は100%の真実だが、他の人が喋る「これが事実だ」という内容には一切回想は出ない。結局それは第三者的な話でしかないからだと思う。けど最後のダニエルの語った車での父との会話には
回想がついていた。しかし声は彼の声でアフレコされている。きっと彼の主観が入った正確な情報ではない。けど彼がこの裁判の第三者ではなく息子として、母や父へ対する気持ちが強くて、必死に思い出したものなのだから少なくとも回想として出てくるぐらいの力はあるのだと思った。

最後もあんなことやこんなこともあったけど
結局息子と母親がガッツリ抱き合うシーンをクライマックスに持ってくるあたり、きっとこの映画が伝えたかったのって、子と親の絆的なことなのかなと思った。
mさん

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