予想以上というか期待以上に面白かった。
落下死した父親の生前の姿は提出された証拠の1つであるUSBメモリに残っていた音声(とその時の描写)が流されるまで作中でも観ている側の視点でも登場しない。もちろん落下死する直前も同様で、言ってしまえばそこはブラックボックスになっていて、現場で取ることができた証拠と関わった人の証言をベースに裁判が進んでいく。
検察サイドの主張や証言ははかなり飛躍した推定や主観的な解釈が多く、明らかに誘導というか認める発言を引き出そうとしているような印象を受けた。ダニエルが否定していたことについても捻じ曲げた発言をしたりするシーンや、いわゆる悪魔の証明じゃないか？と思えるようなシーンもありどうも信用できない。
とはいえ弁護士サイドが全く正しいかと思えばこれも違うと思うし、撮影の仕方や演出も含めてよく出来ているなあと思う。
結果的にダニエルは状況証拠をもって母親が殺したわけではないと証言するんだけど、真実がどうであれ彼が1番真摯で論理的かつ正しいのではないかと感じた。
この辺りは実際の裁判と感覚が似ていて、視聴者にも俯瞰できる情報を落とさないことがここまで効果的に働いてくるのかと少し驚いた。
USBメモリの録音データが流される辺りから、各人物の感情的な面が見られて、そのシーンの俳優陣の演技が本当に素晴らしく、食い入るように観てしまった。
裁判の目的は必ずしも真実を明らかにすることではないことを教えてくれるよき映画だよね。実際のところ、他殺だったのか自殺だったのかは最後までわからないし。ただ一つ言えるのは、ダニエルにとって母はちゃんと愛し合う家族だったんじゃないかな。
021/2024
