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落下の解剖学のQIのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
“スティーブン・キングは殺人鬼か?”

転落死した夫と殺人の疑惑をかけられた妻をめぐる法廷ミステリー

…と思いきや、全く違いました😅

予告で散々流されているシーン

疑惑妻:「私は殺してない」
弁護士:「そこは重要じゃない」

これこそが本作の本質

次々と提示される事実と証言の量はとてつもなく膨大

目の前で起きていることを一瞬たりとも見逃すまい、会話を聞き逃すまい(字幕を読み落とすまい)と、相当疲れました😮‍💨

はたしてそのことが、ある限られた時間における事実の証拠に成りうるのかどうか

あの録音証拠には元某女性アイドルグループメンバーの夫婦の会話録音音声がネットで拡散した件を思い浮かべ、実際に起きていることだと恐ろしくなった人もいるのでは😨w

そんな事を考えているうちに、裁判所でのまるでドキュメンタリーのような映像も相まって観客はいつの間にか傍聴人の一人になっていきます

さらに所々に現代社会の問題を折り込みつつ作品の本質が全くぶれない脚本の凄さ

ホント、どれだけ時間をかけたらこんな緻密な脚本を書けるのかが不思議

そして本作のポイントの一つは言語

英語、フランス語(日本の観客にとってはさらに字幕の日本語)

はたして自分の考えが相手にきちんと伝わっているのか?相手の言っていることがきちんと理解できているのか?という不安

我々にとってはホントにこの字幕は正確に翻訳できているのかという不安w
(字幕翻訳 松崎広幸氏の苦労はいかばかりか)

そんな複雑な設定の中で精神的に追い詰められていく主人公を演じるザンドラ・ヒュラーの演技が神がかり的に素晴らしい

アカデミー主演女優賞本命(と自分は思ってる😁)エマ・ストーンの対抗は『キラー・オブ・…』のリリー・グラッドストーンだと思ってましたが彼女のほうが対抗本命かも

…というかエマ危うしの可能性も😅

当事者しか知り得ない事実

時間とともに曖昧になっていく記憶

現行犯あるいは確実な物的証拠がない限り、第三者の判断でそれを法律の下で裁かなければならないという裁判の難しさと恐ろしさ

そして一年かけて出した大切な人を守るという彼の決断に一気に押し寄せるカタルシス

たとえその大切な人に一時の過ちがあったとしても…

それは言葉を持たない者🐶にとっても同じこと

ラストカットに😢

p.s.
日本語タイトル問題
おそらく本作のタイトルは元ネタになった『或る殺人(Anatomy of Murder)』からの引用だと思われますが“Anatomy”をそのまま“解剖学”と直訳するのには少々違和感が…

どちらかと言うと“調査”とか“分析”のほうが内容にあっているような気がします

ただ『落下の調査』も『或る落下』もダサいのでこのタイトルのほうがインパクトあるということでしょうか🤔

ここにも言語の壁問題が😄
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