なくに

落下の解剖学のなくにのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
2.9
夫を殺したのは妻か自殺か?を裁判で解き明かしていく話なんだけど、自殺だったとしても「妻の不倫」が原因であることは早めに明かされるから「他殺にしろ自殺にしろ原因は不倫なんだから妻が殺したことには変わりないのでは...?」とモヤモヤして楽しめなかったし、いかなる理由があろうと不倫は許せない派なので主人公である妻側に全く感情移入できなくて最悪だった。

だから主人公側の弁護士のパンチラインが決まって裁判の形勢逆転しても「いや、勝訴したとしても自殺はお前の不倫やDVが原因なんだが...?」って思ってストレス。
フェアに言うと妻の不倫の他に自分の仕事が上手くいってないのとか色々積み重なってのことだし夫は夫で面倒なプライドの高さとかがあってどっちもどっちなんだけど、その場合明確に不倫という悪事を働いた妻が悪いとワイ裁判長はジャッジ。控えめに言って死刑になって欲しい。

あとこの映画でもう一つ最悪だったのが、日本で言うガリレオみたいな本格ミステリーかと思って観に行ったら、それでもボクはやってない的なドキドキモヤモヤ実録裁判記みたいな映画だったのも最悪だった。
これはリサーチしてない自分が完全に悪いから八つ当たりなんだけど、「これは事故か、自殺か、殺人か――」ってコピーなのに真実がそのどれだとしても正直どうでも良いような内容だとは思わないし、宣伝の仕方や邦題もめっちゃゴリゴリのミステリーみたいな面構えしてるじゃん......
序盤の内容も、男が謎の落下死!爆音で鳴る音楽で消される証拠、本来つかないはずの場所にある血痕、聞こえないはずの会話を聞いた息子など、それぞれ「どう解明するんだ!?」というワクワクの種をバラ撒いた上で満を持して探偵役のイケオジ弁護士が「さーて、一つ一つの謎を解明して点を線に、そして浮かび上がる衝撃の真実を明らかにしちゃおうかな〜!?」って顔して登場したのに、それぞれの謎がモヤっとした解決を向かえて(むしろ解決しないで放置)、全然ミステリーじゃなくて裁判のもやもやを描く話だったのもむかつく。逆に「裁判に携わった人々の複雑な心情を描いた映画なんだ!」ってわかった上で観たら良作かも。いやでもやっぱ本当なんなんだこの映画。
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