なつこ

落下の解剖学のなつこのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.6
鑑賞から2週間経っても、まだうまく言葉で表せない。

法廷は真実を明らかにする場所だけど、その「真実」が誰にも分からない時は?
みんなで「決める」のだ。
それがこの裁判の役割。

その為に、夫婦間や容疑者の妻の様々な秘密が晒されていく。
検事の仕事は、その素材をどう容疑に結びつけるか。弁護士の仕事は、それを阻止し傍聴席の気持ちをいかに引き寄せるか。
真実がどうなのかは、もはや関係ない。

判事はこうなることを予測して、息子に傍聴しない方がいいと伝えるが、息子は真実を知りたいと、傍聴を続ける。

息子にしてみたら、聞きたくない話ばかりだし、母親としては息子に知られたくないことだらけだ。
それでも母親は弁明ができる。
死んだ夫は弁明ができない。
だからなのか、夫の尊厳を守ろうとする様子が端々に見えて、やっぱり彼女は無実なんじゃないかと思えてくる。

誰にだって、なんとなく公にされたくない秘密はある。それが事件と関係あるかどうかは、当事者にしかわからない。

事故か殺人か?で始まった裁判は、いつの間にか自殺か殺人か?の二択に変わっていた。
事故の可能性はあると、模型を作って説明した専門家もいたのに、何故事故説は葬られたのか?

裁判というのは、大半はこうしてモヤモヤしているものなのかもしれない。
そんなリアリティは凄くありましたね。

モヤモヤしすぎて、何度か心の中の入間みちおが「職権を発動します!」って言ってました笑
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