針

落下の解剖学の針のネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

予告編も見ずにポスターとキャッチコピーの情報のみをもって面白そうと思って観に行った所、思っていた内容とはかけ離れていた。てっきり、日本のガリレオシリーズのように様々な学術の観点から他殺か自殺かを見極めるサスペンスかと思いきや、実際は証拠不十分な中で事実と想像、主観と客観を軸にして繰り広げられる弁護と検察側の法廷劇。期待していた解剖学的な視点はほぼ無く、夫婦のあり方に焦点が当てられた作品だった。マリッジストーリーを思い出させた。

あれほど運命的な出会いをして、言語の壁を乗り越えて、子宝にも恵まれて、仲睦まじく暮らしていた夫婦でさえ、些細な綻びが修復不可能になる。てっきり序盤ではサンドラに肩入れし、無実を応援していく流れかと思いきやそうでもない。サンドラが悪人とまではいかないけど良人にも見えない。不倫、モラハラ的言動など。前半では夫の人物像が全く描かれないのも良かった。一旦息子と同様、「突然夫が不審死をした」ということと、数少ない証言から観客も考える必要があった。後半の夫婦喧嘩のシーンは地獄。一旦落ち着いてまたヒートアップする所、リアルすぎる。自分があんなこと言われたら、さすがに泣いちゃう。ここで『車輪の下』を読みたくなった。

結局最後まで真相は分からない、サンドラしか知らない。モヤモヤする結末だった。個人的には、手はかけていないけど自殺の決定打になったのはサンドラだと思うし、サンドラに夫婦喧嘩を後悔するような気持ちはもう残っていなさそう。

”見返りを求めないのが愛”とか”無償の愛”とか俗に言うけれど、そんなものないと思った。「自分は相手の自己犠牲を理解すること 」「相手は自分の自己犠牲を理解してくれること」夫婦生活では特にこの価値観が大切な気がする。結婚生活に、夢などない…


総評、いぬかわいかった。2回も薬物投与されて、不憫。
針