Maoryu002

落下の解剖学のMaoryu002のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.6
フランスの山荘で男が転落死し、ドイツ人作家の妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑がかかる。旧知の弁護士ヴァンサン(スワン・アルロー)と臨んだ裁判で、夫婦の確執やサンドラの不倫が明らかにされ、やがて11歳の視覚障がいの息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)が証言台に上がることになる。

法廷シーンが多いけど、ハラハラドキドキ、どんでん返しの法廷劇を期待しちゃいけない。
裁判ではサンドラの人格と生活が解剖されていくものの、いくつもの仮説、映像のない音声記録、複数の言語、ダニエルの音の記憶、主観と客観の相違を総動員して、あえて殺人の真相を解き明かさない。

中盤までは、憎ったらしい検事のせいで、無実のサンドラを応援することになり、後半の思わせぶりなカットは、逆にサンドラの策略を感じさせる。
息子に傍聴させるなんて残酷!と思ったけど、息子を最後の証言に導いたのはサンドラの作戦?犬にアスピリンってのも彼女の策略?なんて次々に疑問が浮かんでいく。

この作品にネタバレはないけど、以下、核心に触れてるかも。

サンドラは “裁判が終わっただけで物足りない” と言う。もしかして、次の本を書くことで満たされるってこと?彼女、冒頭で “私は実際の出来事を書く” って言ってたよなー。だとしたら恐ろしい!
いや、やっぱホントに無実で、親子の絆を信じ、息子の愛に助けられたのか?

どっちとも取れる脚本は上手いし、それを表現したザンドラ・ヒュラーと犬のスヌープの演技も巧かった!
それにしても、ズタズタに解剖して観客にぶん投げて、あとは知らない、ってのはどうなのー?
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