ろく

落下の解剖学のろくのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

犬は無事映画です。安心してください。
とても名演技ワンコです。

私もその気が無いわけではないので、気持ちはわからなくもないですが、昨今は常に物事に白黒を付けたがる人がとても増えたなと常々思っていました。
特にSNS、Firmarksのようなインターネット上のコミュニティサイト、某ニュースサイトのコメント欄など。報道や画面上で得た一部の情報から安易にああだこうだと決めつけて、善し悪しを判断してしまいがちです。

しかしあなたは自分の全ての行動や考えを誰かに明らかにしているか?といえばほぼ全ての方がNo.と答えるでしょう。
例え家族相手であっても、ずっと言えずに隠していることや、誰にも明かさず墓場まで持っていこうと思っている一面があると思います。
特にそのような事柄は物的証拠も残さない事も珍しくないです。となると、その事実は自分にとっては事実であっても、他人からすると事実なのか虚偽なのか判別できないのです。

この映画では終始「主観的情報」と「客観的事実」の差異が強調されています。
終盤で飼い犬にアスピリンを飲ませたダニエルを見て「こんな酷いことをするなんて、実はこの子も父親を殺そうとしていたのでは!?」と思ってしまった人もいると思います。確かに酷いですが犬に過剰摂取させた事実と父親の殺害疑惑には何も関連性はないのです。劇中の裁判でのやり取りに則るならそうなのです。

人間は自分にとって都合の良い・納得のいく方向へ舵を切り、結論ありきで理由や経緯を考えてしまいがちです。
SNS上ではこの考え方が顕著に表れ、時に無関係な外野が誰かを傷つけてしまった出来事も多く存在します。
人間は皆多面性を持つ生き物なので、一方から見ただけではどんな人となりなのか決めつけることは出来ません。一つの面だけを見て判断し、断罪してしまうことはとても危険です。
なので、自分の意見を述べる際は根拠と自信と責任を持つべき。頭ではわかってはいるけど、とても難しいことです。

終盤の面白さはピカイチですが正直冒頭からの2時間くらいはちょっと長く感じました。あの長々とした描写が見ている側の思い込みを助長させるのですが。
本当に?と疑いたくなるモヤモヤ感で終わるラストが作品のテーマを体現しているのがまた…。
この映画は家では集中出来ないと思うので、映画館で見て良かったなと思います。
ろく

ろく