このレビューはネタバレを含みます
思った以上にというか、ほとんど婉曲的な演出無しのクライムサスペンス。犬に薬盛るシーンの撮影は倫理的に大丈夫だったのか?という気掛かりがありつつも、常に「ごめん私がやったわ」と恐ろしい白状をしそうな恐怖を匂わせるマチエールに親子2人が力添え。しかしそれが使い古された「ミスリード」という恣意的な演出ではない質感。
裁判の制度的な限界点、人間同士の折り合いのつかなさ、「結局こういうもん」「こうやっていくしかない」的な諦めとも前進ともとれないような、けれどもそういう構造的な欠陥みたいなものに日々しんどいながらもブチあたり続けていかなければいけないことこそ人生、というのをあまりに長く丁寧な裁判と口論のシーンで納得せざるを得ない。