ミステリかと思って見始めたら純文学でした、みたいな内容。いい意味で。
グルノーブルの山荘。
小説家の女性は、学生の取材中に落下事故で夫を亡くす。もとから夫婦仲があまり良くなかったこともあり、女性は殺人の容疑をかけられる。
夫の死は他殺か、事故か、はたまた他の原因か。真相究明は裁判にもつれ込む。
本来裁判が拠り所とするべき「客観的事実」の、なんと危ういことか。状況からして女性による殺害の蓋然性が高く思われるが、無罪を主張する本人たちは嘘をついているように見えない。しかしそれを知っているのは画面のこちら側にいる我々視聴者だけ。
「客観的事実」だけを根拠とする検察官は女性を犯人と決めつけ、執拗に追い込んでくる。「客観的事実」の隙間を「想像力」で補い、真実が捻じ曲がっていく様はうすら寒くもある。
最後、目が不自由な息子の証言が判決の決め手になる訳だが、では最初から証言できるかというと問題はそう単純じゃない。
様々な証言や過去の事実を知り、頭の片隅に眠っていたささいな記憶が、最後にやっと繋がるのだ。
一見正しそうに見える情報からすべてを判断することの危うさ、多様な文脈から真実を掬い上げることの困難さ、
考えさせられる映画だった。
淡々としてるけど濃密。。
