夫の落下による死亡事故を発端に、作家である妻、事故で弱視となった息子、息子の良きパートナーである愛犬と共に、幾人かの人を巻き込みつつ事件を追っていく法廷サスペンス。
タイトルがそんな感じなので、どんでん返しやトリックなどを期待して鑑賞すると確実に肩透かしを食らう作品でもあります。
この映画、事件の発端や真実は愚か、犯人は誰か、むしろ犯人はいるのか、証言の真偽、ラストの謎解きなどは皆無で、まさにテレビで見聞きするような事件を個人的な思想で考察、ジャッジするのと同様の感覚を味わえる作品であり、監督もあえて曖昧な感じを散りばめ、例えば息子と父の対話のフラッシュバックのシーンさえも、父親のセリフは息子が語る事で、それが真実ではなく息子の思い込みによる記憶であるというような演出が見られたりします。
時間も2時間半と長尺で、そのほとんどは法廷シーンで費やされ、抑揚無く一本道で映画は進むので人を選ぶ作品かもしれません。
映画としては斬新だけど面白いかと言われるとそこまでという感じでしょうか。
淡々とした中でも演技、演出の軸はしっかりしていて、例えば愛犬の薬物過剰摂取のシーンにおいても何十日という訓練を重ねて挑んだそうで、まさに関わる人物、ペットでさえもその人数分答えがあるという映画です。
ただし、時間も長く、冗長的に感じる箇所はあったし、例えば息子が触るテープの事であったり、爆音の中での会話の聞き取りであったり、前半部分で割とワクワクさせるような伏線的な事柄が、じつは勘違いでしたというだけで終わるのは消化不良を感じました。
いずれにしても証拠不十分での判決なので、伏線回収は不要かもしれませんが、法廷ものという事で多少のひっくり返りはあってドキドキはさせてもらいたかったのは本音。
俳優さんの演技はどの役も素晴らしいので、それぞれの感情の揺れを楽しむ映画なんだなと思います。