キャッチ30

枯れ葉のキャッチ30のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.1
 旧式のラジオから流れてくるロシアによるウクライナ侵攻のニュース。分断と不寛容と戦争が横行する不条理な世界にアキ・カウリスマキ監督は微かな希望の光を灯す。

 物語はヘルシンキに住む中年男女のボーイ・ミーツ・ガールだ。スーパーマーケットで働くアンサは期限切れの食品を持ち帰ったり、ホームレスに与えたことを警備員に見咎められ、職場を解雇されてしまう。ホラッパはアルコール依存症ながら工事現場で働いている。ある夜、2人はカラオケバーで出会う。すぐに惹かれ合うが互いの名前も知らず、言葉はなくただ視線を交わすだけだ。

 ここから2人はすれ違いと再会を繰り返す。アンサは市電の停留所でホラッパに声を掛けるが正体をなくしていた為、その場を去る。映画鑑賞の後、アンサは自宅の電話番号が書かれたメモをホラッパに渡すが彼はそのメモを失くしてしまう。漸くアンサの自宅でディナーに漕ぎ着けたホラッパだが、酒浸りであることを彼女に咎められ、怒って出てってしまう。果たして2人は幸福になることが出来るのか……。

 カウリスマキ監督は不器用で臆病な男女の心の機微を丁寧に描く。市電が行き違うショットは2人の姿を暗示しているようにも見える。カラフルな色彩に彩られた美術や衣装と数々の楽器も映画に花を添える。