春井

枯れ葉の春井のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.4
仕事帰りに有楽町のビックカメラ8階に駆け込む。現金しか使えませんに一瞬ヒヤッとして、ほとんど有り金ぜんぶはたく感覚でチケットを買った。

冒頭、スーパーの品出したちが真っ赤なジャンパー着てて、っく〜〜カウリスマキ だ〜〜〜と噛みしめる。目のさめるような赤。にもかかわらずそこはかとない翳りがあってたまらない。

わたしも鈍器みたいな大きさのラジオでちょっとしみったれた音楽ききたい。壁紙を青く塗って赤いソファを置きたい。狭いベッドで犬と眠りたい。
革のあついジャンパーをギュムギュム鳴らしながらマッチでタバコに火をつけて無造作にマッチ捨てたい。好きな人を家に招待してうまくいかず食器とカトラリーをゴミ箱に突っ込みたい。これは嘘。
浮き雲でも思ったけど、夜のトラムの感じもたいへん好きだ。必ずライブというか演奏のシーンあんのもいいね。今回の女の子二人組、シュールででも曲すごい好きだった。
バリトンボイスの同僚、声よすぎて笑っちゃった。歌はあれはうまかったんかな?

サラダ、って出されてたサラダが思ってるサラダじゃなくてパスタっぽかったな。というかあの食事のシーン、ポスターにもなってたけどさすがに美しすぎる…。思わず息を呑んだよ。構図というか色というか何もかもが完璧だった。
ジュークボックスほしいぜー。

クビになったアンサが同僚の女性と別れるシーンのかっこよさ。「意識がないなら5分だけいいだろ?君の友人はおれの年齢を誤解している」 「歌がうまいのね」→「そうか?君しか見ていなかった」
カウリスマキの男たち、すぐに結婚とか言いがちだな。

カウリスマキ作品に出てくる、冷たそうな部屋でせせこましいベッドに横になってるシーンがめちゃくちゃ好きで、今回ホラッパずっとそういうベッドでごろごろしてて最高だった。特に、住み込みの職場を追い出された後の、ホテル?のベッドよかったなー。雨が窓ガラスを打つ感じも大好き。
あの絶妙な照明の感じというか、ライトニングの雰囲気ほんとうに気持ちいい。ちょっと舞台っぽいというか、非現実的というか、つねに影があるというか、そのニュアンスの感じたまんねんだよな〜。

カラオケ王はつねに、真っ赤なシャツの下に黄色いシャツ着たりバチバチに明るい服でよかったし、アンサの同僚もいつも柄物の服着てて、あきらかにホラッパともアンサとも違う雰囲気で、それもまたよかった。よかったよかったうるさいな。今年の目標は「よかった」以外の言葉で感想を書くことにしようかな。

でも、「この映画むちゃくちゃよかった!!!」って感じる器官と適切な文章を組み立てる器官って多分ちがうから、しかたないかもな。
いいもんはいいし、そこにいちいち言葉を尽くすのも野暮なんかも。本末転倒ですが。

パンフレット買ったので家でゆっくり読も。
春井

春井