春井

aftersun/アフターサンの春井のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.3
ずっと気になってて、ぽっかり予定のない土曜昼、U-NEXTでみました。

まず映像がきれいだなー。光というか色味というか。あざやかでエモーショナル。海のきらめきとか水しぶきとか、花とか空とか…

ソフィのいかにも11歳らしい、見てるこちらがなぜかはらはらしてしまうようなあどけない体躯、夜にクリームを塗る父のやさしい手つき、まなざし、うんたらかんたら…

カラムのあやうさがわたしたちにはいやってほど伝わってくるのに、ソフィはそんなこと想像もしてない感じで、それが終始胸を締めつけてくる。声を上げて泣く背中、暗く黒い海に駆け出す背中、ひとりバルコニーにたたずむ背中…
カラムの苦しみや悲しみは、最後まで何かわからない。

ラストの、ビデオテープを再生する大人ソフィからシームレスにかつてのカラムがうつされるシーン、ものすごいグッと来てしまった。なにあれ? あれがこの映画のすべてな気さえする。ビデオテープの映像は、そのときカラムがどんな表情で撮影していたのかはわからない。ソフィの自撮りは繰り返し出て来たけど、カラムは一度も自撮りをしなかった。だから最後のシーンにしびれちゃったのかな。こんな顔してたんだ、って。

正直、好みかって言われたらちょっとわかんないな。さすがに内省的すぎるし、説明しない映画は好きだけどあまりにも語らなさすぎるかも。ただ、映像だけでこんなに雄弁に語ることもできるんだなとは思った。

何度も何度も日焼け止めを塗ってあげるカラム。あれは愛だよね。
春井

春井