クロスケ

枯れ葉のクロスケのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.2
アンサの電話番号をメモした紙きれが、我々観客に見られていることを承知しているかのように、ホラッパの上着のポケットからはらりと落ち、風に煽られて何処かへいってしまうのを見たとき、思わず「あ〜」と声を上げそうになりました。
あらゆる創作物の中で散々見せられた、こんなあざとい演出に素直に反応できるのは、そうなるのがこの映画にとって当然だと思わせるカウリスマキの揺るぎないスタイルに安心したからに他なりません。

この映画は殊更「視線」というものを観客に意識させます。
主人公の二人が顔を突き合わせて交わす視線は勿論のこと、スーパーの警備員が不正を働きはしまいかとアンサに向ける厳しい視線もそうだし、カラオケバーでステージ上のパフォーマンスを無表情で見つめる客たちの視線もそうです。
彼らが顔をこちらに向けてカメラを見つめ返す姿は、カウリスマキ自身が敬愛する小津の影響を感じさせますが、笑顔など微塵も見せようとしない無愛想な彼らの顔が印象的です。

そんな中、終始伏し目がちで、見るからに薄幸そうなアンサ役のアルマ・ポウスティンの控えめな笑顔が何とも愛おしい。
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