アウシュビッツを舞台にした映画は
いくつもあったと思いますが、
この距離感と温度感で描いた作品は
なかったと思います
ある意味ホラーだし、グロテスクでもあるし
ごく普通でもあるし
感覚の境界が見えなくなってくる、
不思議な映画だったと思います
どこからこれが普通になって
しまったのか、
恐ろしくもあり、
ジェノサイドや戦争がもたらす
恐ろしい普通の感情でもあると思いました
どんなにこれが普通だと思っても、
人間は感情をもつ生き物だから
おかしいと思うことは
本能的に拒絶してしまう
消えてしまった母親と、
嘔吐する彼の姿に、真実を
見たような気がします
すごいのは、ほとんど一度も
収容されているユダヤの人の姿が
見えなかったこと
終始不穏な死の音と
煙突からたち登る煙が
彼らの存在を表しています
分かりやすい残酷さや恐ろしさだけで
伝えるということ以外の、
映画表現としての美しさや芸術的一面を
備えた映画だと思いました