ジュライ

関心領域のジュライのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.6
冒頭からして十二分に暗示的で、しばらく画面が真っ暗で、しかし物音だけは聞こえてくるという時間が1〜2分くらい続く。
ああいう真っ暗なシーンは家のテレビで観ると画面に余計なものが反射して雰囲気が削がれるので、映画館で観てよかった。

エンドロールの曲はずっと聴いてると精神のネジが緩んでぽろりと落ちそうになる雰囲気で、悪趣味で好き。
「3回見ると死ぬ絵」とか、ああいうのに近い不穏さがある。

作中では全体的に登場人物がしら〜っとしていて、そしてそれを描く製作陣も彼らを白けた目で撮っており、さてそれを受け取る観客はどう観るか、と始終問いかける作り。
壁の向こうは見えないけれど、仮に壁がなくて丸見えだったとしても、あるいは『時計仕掛けのオレンジ』みたいに瞼かっぴらいて強制的に見せたとしても、「こちら側」にいる人の行動や思考は基本的に変わらないだろう。自分が「あちら側」と直接関係がないと思っているうちは、人はいくらでも目と耳と心を閉ざせる。

原作のほうも痛烈だったのでおすすめ。
「立ち直れない」と言う権利があるのは唯一、被害者だけ。
ジュライ

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