アウシュビッツ収容所と壁一枚隔てた場所で暮らす一家、子どもたちは豊かな自然の中でのびのびと育ち、広い庭には瑞々しく草花が萌えている。
家族の幸せを願うなんの変哲もない家族に見えてしまう。そう、見えてしまう。自分達となんら変わらないありふれた家族観の持ち主であるかのように。
よっぽどサイコパスである方が憎める。
この人たちが異常なんだで片付けられる。そんなことはない。
わたし達も同じ人間で、この一家と地続きな位置にいるのだ。
どこか無機質な遠目からのショットが、不気味なまでに平熱な体温を保つ。
煙突から棚びくドス黒い煙と、雲ひとつない青空のコントラストは、決して交わることがない。世界中の空はつながっているというのに。