違和感と気持ち悪さが、身体の拒絶反応として現れる。
怒りとか、残虐とか、頭で考えられる判断力は麻痺し、この場から逃げ出したくなる居心地の悪さを映画館の空間に作り出す。
所長と妻、子どもたち、祖母も訪れる、庭には花が咲き、鳥が囀る。
そこから聞こえる、例えようのない不穏な音、銃声が交じる。
そして映像の主役は、庭の後ろに見えるアウシュビッツ収容所の大きな建物であり、煙が昇る煙突である。
壁の向こうの世界とのギャップ。
幸せそうな家族から感じ取れる違和感。
いつも泣き叫ぶ赤ん坊、家の中を歩き回る犬。
セリフは殆どない。暗転が長く、不穏な音が響く。
本当に恐ろしいとは、頭で理解する前に、身体が拒絶することを体感した。
