かじドゥンドゥン

関心領域のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.8
アウシュヴィッツの強制収容所に隣接した邸宅で暮らす、所長のルドルフ・ヘスとその家族。ときに罵声や叫び声、鈍い打撃音や物を引きずる音が聞こえて来るなか、一家は平然と日常を送っている。特に妻は、自宅庭園を草花で飾ることに専心し、その外で何が起ころうと、関心の領域外。やがて夫が出世して転属になると、自分はこの住まいと暮らしを手放したくないと譲らず、夫を単身赴任で送り出す。夫ヘスはヘスで、さまざまな収容所の合理的運営を提案する重役に成上がり、もてはやされるが、ある宴の後で一人きりになった彼は、突然の嘔吐。すべてが淡々と進行しているけれど、何かがおかしい。あるいは、すべてが淡々と進行していること自体が、絶対におかしい。

収容所の内部を「音」だけで描いた点が新しい。壁の向こう側で起こったことを戦後に俯瞰で見る(知る)ことができる我々の立場を採らず、当時、壁一枚はさんで暮らしていた人間のリアルな聴覚体験こそを再現している。