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関心領域のchiのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.8
初日に鑑賞。いやー評価が難しい。淡々とし過ぎていて意識飛ぶ。それこそが私たちの無関心の表れというツイートをTwitterで見たが、本当にそうかも。
映画を見ている私たちは、音に集中して見ているから平和な視覚情報と合わない銃声や悲鳴と言った聴覚情報を感じ取るけれど、実際にはどれだけ意識の中にあったのかなとは気になる。毎日の生活の中で慣れが生じることもあると思う。でもだからといって完全に聞こえていない(意識していない)かと言うとそうではなくて、窓から塀の方を見ていたり夜に音を聞いていたりする。
関心と無関心の境目って難しいと思うんだけど、収容所の隣で子供たちをプールに入れてきゃっきゃと遊ぶ一方で、川で遊んでいたら骨が流れてきて大急ぎで川から上がらせて体を念入りに洗ったように塀の裏で何が行われているかはしっかり認識している。自分はユダヤ人でないから関係がないと、自分の家の塀の裏でユダヤ人が殺されていようと呑気に遊んで生活していることに罪悪感のようなものを感じることもないのかと思うと、人間の恐ろしさを感じる。人種なんて、自分で選べないものだから何かが違えば自分がユダヤ人として生まれていたかもしれないし、ドイツ人だとしても立場が変わって自分が迫害される立場になるかもしらないのに。
すごく淡々と生活を映している作品で私は淡々としすぎているという感想を持ったが、映画を見た後に公式Twitterで上がっていた撮影手法の動画を見て度肝を抜かれた。この家中に固定カメラを何台も置いて、カメラマンはそこにはおらず、俳優が一人で演じたそう。
本作は視覚と聴覚のズレが特徴で、とにかく音が不安感を煽る。特にラストからエンドロールの音には震え上がった。今まで映画館で感じた中で一番の恐怖かも。
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