パーコーメン

関心領域のパーコーメンのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.8
アウシュビッツ収容所の隣に暮らす看守の家族の話。タイトル通り関心の領域。阿鼻叫喚が聞こえたり、黒煙や夜の中の燃え盛る赤、それに対して何とも思わず暮らす家族たち。
音が聞こえなければただの家族の話なのに、音が付くだけでここまで不穏に感じてしまうとは。様々な音が隅々までよく撮られている。赤ちゃんの鳴き声や犬の鳴き声が対比としては中々。
そもそも使用人たちとの関係性も不穏。夜逃げしたお母様もそうだが慣れて仕舞えば、それが日常風景と覚えて仕舞えばなんら変哲もない毎日。それを象徴するかのように終盤は現代のアウシュビッツ収容所の資料館で清掃をする方々。大量の靴やガス室などの負の遺産を恐らく何の感情、関心もなく毎日掃除業務をされているのだろう。それが普通なんだし、それが日常。
ほぼ固定カメラの撮影で傍観しているかのような見せ方。悲鳴のようなBGM。オープニングからエンディングまでずっと不快感を聴覚に与え続けるそんな逸品。
晩餐会でアドルフが客人たちを眺めながらガス室の設計を考えるくだりは中々。
今までナチス関連や戦争関連の映画は沢山あれど、殺戮のシーンは全く出ない、ヒットラーも名前だけ、ただそれを連想させるかのような音や処理、そしてそれらに対する無関心の目を題材にした珍しい作品。
ミッドサマーもそうだがその世界では当たり前、それを怖いと思うのはそう教えられてきたから、そう思う方が正しいから、考えれば考えるほど揺さぶられる。勝ち負けで善にも悪にもなる。考え方次第ですよ。
下手な事は書けないからそれなりにリサーチを掛けて構想を練られたのでしょう。
A24の切り口は相変わらず皮肉ってて面白いわ。