ヨミ

関心領域のヨミのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

想像は武器だ。
表象不可能性、という使い古されたことばは、つまり我々の想像を絶するような残虐な現実には何をもってしても到達できないということで、まさにホロコーストはその主たる例だ。
一方でディディ=ユベルマンやその提言に呼応したゲルハルト・リヒターは、表象不可能なものににじり寄ろうときた。本作も間違いなくその流れに連なる。

本作の映像で示されるのは常に輪郭であり続けている。遺体の一部は何度か映されるものの、我々に対して「いままさに、1000°Cの温度で大量の人間が焼かれている」ことを示し続けているアウシュヴィッツの煙突と煙。ユダヤ人たちを移送している列車の煙。常に鳴っている銃声と叫び声。そのすぐそばで暮らすルドルフ・ヘスの家族の楽しげな声。
よく「痛いシーンは直接映すより、映像に出さないほうが想像を掻き立てるので効果的」と言うが、そのたいへん辛い実践だ。そしてそれら工業的な民族の破壊の先にある、展示された「結果」。直前にヘスが吐き気を催しているが、まったく吐き気はヘスに対してこそ催すものだ。
直接の痛々しいシーンはほとんど出てこないが、あまりのグロテスクさに中座を何度か考えるまでだった。家では観れない。途中でギブアップしてしまう。
ほんの数年前までなら、ここで話は済んでいたのだろう。いま、この地獄を抜けた先に違う違うが展開されていることを想起せざるをえない。いま、まさに、本作で叫ばれ続けている断末魔が中東で上げられ続けていること、それをしている国のこと。人類のおぞましさは止まることがない。
ヨミ

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