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関心領域のfishmuttonのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.5
「お前もだからな」と指を刺されて言われた気がした。

私は歴史の知識が乏しく、よくわからなかった。しかし、作り手は(時に無知で無関心な)観客も込みで作っていると私は感じた。

観る者への説明はほぼなく、そこにあった(かもしれない)日常風景が描かれる。暗喩がちりばめられている気がする。

映画としての印象は、撮り方と音響にこだわっているなと思った。
定点カメラのような、一歩引いた距離のある撮り方。不安をあおる音響。不協和音みたいなのが冒頭と中盤に流れるんだけど、それは本当に不快というか、居心地が悪かった。

映画(ドラマ)というより、映像芸術作品を観た感覚に近い。

実在の人物たちの背景や、川の汚染(?)、リンゴの少女について調べてみようと思った。
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映画館で観たかったので観られて良かった。
映画を観ながら、この環境は子供への虐待だよなあとぼんやりと思っていた。
鑑賞後、人と話して「女の子は夢遊病(?)、長男は弟を虐め、弟はユダヤ人を追い立てる声=叱られている=悪いことをしている→『もう二度としないで』と呟く、完璧な家庭像の中に現代にも通じる暴力がある、それが表面化している」みたいなことを言われて、なるほどなと思った。さらに「父親はメイドを搾取、多分妻は庭師と浮気してるんじゃないか」と言われ、あの完璧()な家庭の歪みがそういう風に描かれていたのね、と思った。
リンゴ→歌が観たときはよくわからなかったんだけど、あのリンゴじゃない小物入れ(?)みたいの拾ったときに楽譜を入手したんだね。「私たちはここにいる(いた)」という証を託したのだろうと想像した。
ヘンゼルとグレーテル、道しるべのリンゴ。家に帰る=生きて帰るための道しるべのリンゴ。
私は魔女が殺されるシーンに寓話的意図を感じたことはなかった。しかし、作中では「罰を受けて燃やされたのです」→アウシュヴィッツの炉がオーバーラップして、すごくグロテスクに感じた。
SNSで作中の「カナダ」についてふれてる人がいて調べてみたら、カナダ=ポーランド人が非常に豊かと見なしていた土地→強制収容所の保管庫のことと出てきた。そういうことだったのか。
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