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関心領域のzowのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.8
とにかく終始、『音』っていう映画だと思う。
音響賞もとっているし、音に意識を割いて、鑑賞したけど、すごかった…

作中音楽はほぼ流れず、優雅に暮らす家族の生活が描写される中で、何かしら音が絶えず流れ続けている。

描写としてはとても清々しく幸せなシーンが多いんだけど、その裏で流れる、不穏な音たちが観客に違和感を与え続ける。正反対のものを混ぜ合わせた気持ち悪さが常にある感じ。

収容所内での直接的な描写やホロコーストの残酷な描写は一切なく、悲鳴や銃声、荒らげな看守の声、空に上がる黒煙、定期的に来る汽車、住人同士の楽しげな会話、川遊びのシーンなど、塀の向こうで虐殺が行われている事実が間接的に淡々と描写されていて、それもまた気持ち悪かった。

花々のシーンや白黒のシーン、終盤の一連のシーンなど作家的な描写も多くて、好みだった。

気味の悪いくらい楽しそうな奥さんや何も知らずに遊ぶ子供たちを見ていると、何より無関心や無知である事の怖さがひしひしと伝わる映画だった。

この映画の家族は、塀のすぐ向こうにある現実に対して、無関心であり無知の中、暮らしていたけど、彼らと今生きる我々はどう違うのか?同じなのではないか?そう訴えかけられた気がする。
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