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関心領域のcobiscoのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

【いちばんこわいものってなーんだ?】
めちゃくちゃ気持ち悪いし、恐怖であふれていた。冒頭からこんなに怖くて仕方なくなったのは初めてかもしれない。

一番怖いのは心霊なんかじゃなくて人間の無関心。

動物と赤ちゃんが本能的に恐怖を感じ取っていることに気づいた瞬間、本当に嗚咽しそうになった。

対岸の火事ということは我々にとっても日常茶飯事。

そしてこの映画を見たからと言って自分の行動を変えられるか?倫理観を進化させられるか?本当に自分が生きている価値があるのか?

こんなことまで考えさせてくるからこれまた気持ち悪い。

優しい映像なのに凄まじい煽り。

サーモグラフィーのシーンについて。
人間本来の温かさで動いている少女に色がなくて、無関心で動いてる富裕層に色が付いてる。超逆説的だし、超皮肉。

あなたたちの目には何色で写ってる?と言わんばかりのこれまた煽りとも感じられるような作り。

何の変哲もない光景が続くような作りなのにどんどんヘス一家に嫌悪感が募る。

ちんちんシコシコな映画はあるだろうけど、ちんちんゴシゴシな映画はないと思う。肝心なシーンは見せないのに強烈な気持ち悪さを醸成してくる。所謂「意味がわかると怖い」の極致。

そしてラストのシーン。階段を降り、真っ暗な闇へ。気づく冒頭とのリンク。見事な円環構造。

この事実を知ってもたかが私一人の力では何も変えられないし、変わらない。その歯痒さを感じたことすら人間は忘れるのだろう。これもまた恐怖の一つ。

戦争って、敵対国の上層部にとっては純度の高い正義と正義のぶつかり合いで、当人たちは正しいことをしている、大義名分があると信じ込んでいるからこそ恐ろしい。
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