普段通りの日常の音にかすかに聴こえてくる銃声、悲鳴。
ユダヤ人を次々と運ぶ汽車の煙、流れ作業のように焼く焼却炉の煙。
怖い、胸糞悪い、人の心が無い鬼、と
散々嫌悪しながら観て、
劇場を出て何事もなく日常に戻る自分も、
今世界で起きていることを考えたら、
十分同じなのではと吐き気を感じる。
ヘス中尉も穏やかで有能で良きパパに見えるし、
犬も可愛い、子供たちも楽しく暮らしていて、庭も確かに超素敵。
彼らにも家族がいて、戦争早く終わってねなんて言って、
どうしてここまで狂ったのか。
自分も同じ状況になったら同じようになるのか。
エンドロールの音楽、あれはガス室での悲鳴を表現していると見てまた顔が歪んだ
リンゴを隠す女の子の存在と、ピアノで弾いた曲が実際の録音と知って泣いた。
ヘス中尉が吐き気を催したあとにアウシュビッツ博物館の映像になるシーンが個人的に1番刺さった。
目を背けたくなるような事実を保管し後世に残し、アウシュビッツ保全のために黙々と、丁寧に掃除する人たち。
そしてそのガス室虐殺を決めたヘスと目が合う。その視線の先には私。背筋が凍る。
この映画は第二次世界大戦の一面でしか無いけれど、このドイツの非人道的な虐殺に対して立ち上がった連合軍、ドイツと同盟を組んだ日本。
その結果として沖縄での地上戦と、広島・長崎の原爆投下に繋がると思うとあまりにも辛い。
戦争の残虐性をこれほど知っていながらも繰り返そうとする人間の愚かさを考えさせられる。