いかにもヨーロッパのインテリが好きそうな雰囲気映画。
バキバキにあつらえられた邸宅や家具の配置、カメラの構図、そこから漂う不穏な気配は素晴らしい。が、はっきりいって画面の中で起こることは単なるちょっと裕福な家族の日常であり、作中もっとも波風が立つのは旦那の転勤にまつわる夫婦のあつれきと単身赴任騒動でしかないので、正直退屈である。
画面の外で起こってる肝心なことは、煙や叫び声、怒声、悲鳴といった間接的な描写でなぞる程度に触れられる。もちろんそれが意図したものであるのはわかるが、しかしそういった人類史に残る残酷行為よりも冒頭やエンディングで流れるBGMの方が100倍怖いし印象に残るわけで、これじゃあ本末転倒なのではと思う。
こういう映画を誉めて「我々の無関心が云々」と語る人に限って、映画館の帰りに通りすがった駅や公園にいるホームレス、あるいはちょっと違うが、ゴミ収集のおじさんやフードデリバリーの配達員とかは目に入ってなかったりするんだよなーとイジワルなことを思った。