mh

Dear Pyongyang ディア・ピョンヤンのmhのレビュー・感想・評価

5.0
朝鮮総連の大物がお父さんというご家庭のポートレイトドキュメンタリー。
在日朝鮮人の成り立ちからやってくれるので勉強はかどる。
いわゆる在日と呼ばれているみなさんは、ほぼ全員が韓国出身。来日当時は北朝鮮がなかったから当たり前の話なんだけど、こういうのは言ってもらわないと意外に気が付かない。
朝鮮戦争をきっかけに韓国か北朝鮮か祖国を選んだとのこと。
つまり、選んだ祖国に義理立てして、その後の家族の命運をかけることになってしまった。
在日朝鮮人の帰還事業では息子三人を北朝鮮に送っている。このドキュメンタリーの製作者は、両親とともに日本に残っている。
たびたび北朝鮮を訪れており、ホームビデオを回してて、その映像資料がなにげに貴重。
隠し撮りするか、検閲済みのわけわからん素材をまとめるかしかない国の、飾らない部分が垣間見れる。
停電対策に常にマッチとろうそくが準備してあったり、子どもはなにひとつ日本の子どもと変わらなかったり、意外に不自由してなさそうだったりと、当たり前のことが新鮮に映る。
なんといっても、主役に据えたアボジ(お父さん)がかっこいい。
時代に翻弄されつつも、変化を受け入れていく様子は「ジャイアンツ」を思わせる。ドキュメンタリーとしてはオーソドックスでも、このお父さんの存在がこの作品を傑作に押し上げている。そういった意味では、「ゆきゆきて神軍」に似てないこともない。
煮え切らない作品が多い北朝鮮が題材のドキュメンタリー界隈だけど、これはいちにを争う傑作だと思った。
これと対をなすようなオモニ(おかあさん)版の新作「スープとイデオロギー」に俄然興味が湧く。
これは超おすすめ、面白かった!
mh

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