かじドゥンドゥン

跡形もなく消えるのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

跡形もなく消える(2023年製作の映画)
3.0
妹のマリーから、友人のカティがおそらくは女好きで狂気的な男マーカスにさらわれたので一緒に探してくれと連絡を受けた姉リサ。田舎の村を離れてウィーンで暮らしているリサは、そう簡単に帰郷もできないため、妹の願いを受け流していたが、今度はそのマリーが友人ナタリーとともに失踪したと知り、慌てて帰郷。その日はカーニヴァルで、村中が昼間から飲んで歌ってお祭り気分。年頃の少女が二人で二三日外泊してもなんてことはないと、取り合ってくれない。唯一協力的なのは、ハンネロルという中年女性で、彼女がいうには、若い子好きの中年男リプスが怪しいという。そこで、リサがハンネロルと二人でリプスの家の地下室に侵入すると、そこには彼の元妻で以前に姿を消したレナテのパスポートや身の回りの品が保管されている。ひょっとすると巨大な冷蔵庫には彼女の遺体が・・・と思われたが、中は保存食品で、ちょうどリプスが帰って来る。彼の説明によると、妻レナテを引き止めたが、やはり村を出て行ってしまっただけで、彼女を殺していないし、少女の失踪にも関与していないという。

リサは、マリーの日記から、妹がレズビアンで、カティと恋人同士だったこと、そして青年マーカスは自分の妹にまで手を出すような男だったことを知り、村に居た頃に付き合っていた現在警官のパトリックを説得し、積極的な捜査へと漕ぎつける。

村総出で捜索した結果、マリーと消えたナタリーの遺体が見つかる。さらに、鎮静剤で意識朦朧としながら道に飛び出してきたマリーが保護される。結果、意外にもハンネロルの関与が判明。つまり彼女は、友人レナテの失踪を気にしており、犯人が夫リプスだと思い込んでいたが、保守的な村人も警官も事なかれ主義で捜査に着手しなかったため、少女二人を自分のもとにとどまらせて、村で騒動を起こし、その流れでリプスの過去の罪を曝こうとしていた。ところが、ナタリーがしびれを切らせて、家に帰りたいと言い出し、もう少し待てとハンネロルと口論・もみ合いになったときに、ナタリーが転倒して、頭を打って死んだ。その遺体をハンネロルは湖に投げ捨てた。

リサはさらに、自動車修理をしている自分の父のガレージでカティのシュシュを見つけた。これを手掛りに捜査したところ、父がカティを匿っているという意外な展開。ガレージで、マーカスがカティを襲おうとしたところ、父がやってきてマーカスを取り押さえたが、そのときにカティが怒りにまかせてマーカスを鈍器で殴り殺した。リサとマリーの父は、我が娘の恋人カティを守ろうと、金を工面し、ほとぼりがさめるまで彼女を1年ほど海外へ逃がそうとしていたという。カティが恋人マリーに連絡しなかった(「探さないで」と連絡した)のは、一度会ってしまうと、1年の逃亡生活が淋しくなるからだった。

元をたどれば、一人の女性(レナテ)の失踪を事件とみなさず、何も無かったことにしたがる村共同体特有の雰囲気が、ひとを苛立たせ、あるいは怒らせ、それが高じてこうなった。