ベンアミ

Winter boyのベンアミのネタバレレビュー・内容・結末

Winter boy(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

人生は良くも悪くも他者からの影響を受け他者に左右される。
その中で不幸や悲しみと出会った時に全く同じではなくてもその前の状態に近づいていけることを信じる。
そのきっかけは思いがけない他者が与えてくれる時もある。与えてくれたことに気づけたあとはただそれを推進力にして人生を泳いでいく。
ショックが重なったりうまくいかない時があっても立ち止まることを含めて精一杯もがき続けるために自分が取った行動に対して永遠に残る形でのネガティヴの烙印を押さない。打ち止めにしなければいつか自分自身の解釈が自分を救う時が来る。全てが周囲に守られていた本物の凪の期間が人生から遠ざかっても少しずつでも心休まる日が来るはずだと思えるから周囲を愛しながら生きていける。


人間万事塞翁が馬的な映画。『帰れない山』と重なるテーマ性も感じるが、思春期とゲイセクシャルのレイヤーもあり、また、私的にはハッピーエンドだった。
1週間が3ヶ月くらい濃い。
物凄く好きになった相手が居て、でもその相手は自分に対して恋愛感情は無く、それでも振り向かせて独り占めしたいし、一緒にいれば何もかも忘れてしまうくらい楽しいという気持ちと、振り向かせられないことによる空回りの苦しさや、好きな人の真似をしたくなる姿、曲を聴きながら相手のことをイメージする感じ、焦った結果、思いがけないトラブルを引き起こして、肯定できない自分が衆目に晒され(本当は衆目ではないけど本人の感覚で言えばそれくらい)恥を負うまでの流れがすごく丁寧。そこから先の救いは、超最短ルートが奇跡的に繋がった感じ。また笑顔が戻って本当に良かった。

父親が自死だったのではないかと思ってしまう気持ち。前触れがあったから、観客も同じように疑ってしまう。
母親は子がその疑念を口にした時に頬を平手打ちして否定する。母も同じように思っていたかも知れないが、息子の疑念に対して「確かにあの状況ならそういうことも起こりうるかもしれない」と肯定しない優しさに、守られていることを感じる。
ベンアミ

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