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ドラキュラ/デメテル号最期の航海のmのレビュー・感想・評価

4.7
本国で興行的に大コケしたのは知っていたので、この類のジャンル映画にしては明らかに気合が入りすぎた撮影・美術・衣装に序盤から大赤字の気配を察して青ざめる。そんなこちらの余計な心配など勿論どうでも良くて、演出・演技・撮影・美術・衣装等々全てのパートの人々が各々の全力を発揮した事で、この映画はシンプルなジャンル映画でありつつ力強さをきちんと備えている。その事にとても好感を抱いたし、素直に映画を楽しんだ。アンドレ監督、現時点でダントツの最高傑作だと思う。ちなみに撮影監督はイーストウッド映画を数多く手掛けてきたトム・スターン。いちいちアングルが良いし、イーストウッド組よりライティングに凝る時間の余裕があったのか照明がいつもよりも全然良い。

ドラキュラの全体像は割とすぐに画面に映し出されるものの、容態の変化・形態の進化・出すシチュエーションの変化で飽きさせないし、実は単調な展開をそう見えないようにする創意工夫がある。

知性と能力があるのに人種差別故に燻る主人公をコーリー・ホーキンスが力強く演じていて印象的。弱さを見せるリアム・カニンガム、キャリア史上たぶん一番熱い役を熱演したデヴィッド・ダストマルチャン、傑作「ナイチンゲール」に続き眼力の良さを見せるアイスリング・フランシオシら俳優陣は皆良い。

冒頭のテロップとタイトル前の一瞬のインサートは無粋で不必要だったけど、その辺はたぶんプロデューサーに捩じ込まれたんだと思う。
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