DJあおやま

愛にイナズマのDJあおやまのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.3
豪華キャストに惹かれて、2人のラブストーリーかと思って観たけど、実際は家族愛に満ちた喜劇で、佐藤浩市に泣かされっぱなしの2時間超だった。
舞台はコロナ禍真っ只中、今観ると緊急事態宣言や協力金だなんてワードに少し懐かしさを感じる。先行きの見えない状況で、不安を募らせギリギリの状態で生きてきる人たちの中、存在しないものとして爪弾きになっている主人公たち。主人公の花子(松岡茉優)は、若くして映画監督を務め、それを良く思ってないのか、まったく話にならない傲慢な助監督に不必要に当たられる。この描写が妙にリアルでイライラ。そんな中迎える、花子と正夫(窪田正孝)の出会い、そしてバーのシーンに、思わずキュンとしてしまった。フィクションとしてはクサいはずなのに、縮んだアベノマスクを着けるいかにもやばそうなルックの窪田正孝のピュアさが、ボーイミーツガールに拍車をかけていて感動してしまった。
舞台設定も相まって冒頭から居心地の悪い時間が続くのだけど、仲野太賀の登場シーンに心が癒された。明るくも、どこか影のある仲野太賀にがっつり心を掴まれた。また、池松壮亮と若葉竜也というお兄ちゃんたちが愛くるしく、高良健吾や趣里は脇役なのにガッツリ爪痕を残している。地味に親子共演だった、中野英雄も良い味出してた。そして、なにより、死にゆく佐藤浩市がたまらなく涙を誘う。真っ白な髪にやつれた顔、多くは語らず不器用な姿、どこか自分の父親を重ねてしまって、ラストはどうしようもなく泣いてしまった。すぐに感化されてしまうタチなので、存在の確認のためのハグ、していこうと思います。
人間は皆、社会で生きる上で、常に仮面を付けて何かを演じているということを、この映画では何度も訴えかけてくる。仕事の場面ではヘコヘコしていても、家族のなかでは父親や長男という役割を果たそうとする姿が印象的。殴り込みのシーンで、長男という立場を全うしようとする池松壮亮が良かった。この映画、変なシーンや展開、演出は多いのだけど、なんだかすべて愛くるしい。
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