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愛にイナズマのmitoのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
3.7
2023年129本目。
自身の家族を題材にした映画を撮ろうとする女性監督の花子だが、プロデューサーや助監督と折り合いが合わず、降板、映画の企画も奪われてしまった。
憤った彼女は、自主製作で撮りたかった映画を完成させるべく、連絡を経っていた家族の元へ戻ることに…。

序盤30分ほどの監督を降ろされるまでの映画製作風景は、ひたすらヤキモキする展開。
新進気鋭の花子に対して「業界では〇〇だ」「業界でそれはタブーだ」と業界を盾に好き勝手言って振り回し、無責任に彼女を降ろすまでは、ただストレス。
何か吉田恵輔監督の映画を観ているようだった。
ただ、何かダウナーな空気感も相まって中弛みを大分感じた。

この若干苦痛の展開が終わると、花子の家族の話へ場面は移る。ここから一気に石井裕也ワールド全開で、面白い展開も増えていく。
同じようなヤケクソ感は「茜色に焼かれる」っぽいけど、それ以上に軽い感じで石井監督の初期の頃(というべきか?)、「川の底からこんにちは」のような明るい開き直りに感覚は近い。

うん、やっぱり失意が希望に変わる様は良いよね。
失踪した母親に電話掛ける所とか。
父の前科の理由が分かった所とか。
あの一家で半グレ連中へ殴り込みに行く所とか。
闇は抱えているんだけど(笑)、その真実が分かったことで、前を向いて歩いていける…という明るい要素を孕んでいるので、とても良いシーンに見える。

家族が一致団結していく故に窪田正孝くん演じる館の存在は少し勿体なかった。
勿論、キャラクターとして新たな家族の一員に位置するし、抱えている問題は家族と共通なので、ちょっとしたエッセンスにはなっているが、「まあ、居なくても機能するかな」、位の関係値にしか感じなかった。
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