旅するランナー

ハロルド・フライのまさかの旅立ちの旅するランナーのレビュー・感想・評価

3.6
【デウスの旅】

原作はレイチェル・ジョイスの小説「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」。
定年退職し、妻と二人暮らしのハロルド・フライのもとへ、ホスピスに入院中のかつての同僚女性から手紙が届く。
余命わずかの彼女に返事を出そうと家を出たハロルドは、途中でコンビニの女の子と会話する。
「大事なのは薬じゃない、信じる心よ」という彼女の言葉に感銘を受け、手紙を直接届けることを思いつく。
そして、イギリスの北端まで800キロの道のりを歩き始める。

「君を想い、バスに乗る」で、ティモシー・スポ―ルは北端から南端へと旅立ちます。
今作では、ジム・ブロードベントが南から北へと歩きます。
途中、多くの人の賛同を得て、パレードみたいにイベント化してしまいます。
でも、ハロルド・フライにとって、この旅の目的は、自分の心を見つめ直すことになっていきます。

ちょうど、伊東潤著「デウスの城」という島原の乱を描く小説を読んで、信仰・殉死について強く考えされられていたタイミングで観たためか、ハロルド・フライのこの旅は,赦しを得るための旅であり、赦しは何かを信じることにより得られるものだと思いました。
それは神を信じることなのかもしれませんし、それこそが宗教なのかもしれません。
最後の光のきらめきが、それを暗示しているようです。

しかし、その信じる心には、何も根拠がないことが分かります。
神を信じればハライソ(天国)に行けると、キリシタンたちは教え諭されますが、誰もハライソを見たことはないのと同じだなぁと感じた次第です。
結局、信じるか信じないかは、あなた次第なのです。