Masato

グランツーリスモのMasatoのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.5

ゲーマーへ捧ぐ

IMAX試写会にて (Filmarks招待)

グランツーリスモは子どもの頃に3 Aspecをプレイしてたのと、最近は最新作の7をプレイ済。アンチャーテッド実写化に続く2作目のPSスタジオの実写化作品。ゲーマーがプロのレーサーへと成った実話に基づくサクセススポ根映画。

本国での批評家からの評価は芳しくなかったが、公開すると観客からは圧倒的な支持を得た。それも納得の見る者の心を意地でも震わせる胸熱なスポ根ドラマだった。今年でも上位に来るストレートな熱量。レースシーンの演出も超絶カッコよくて見応えがありすぎた。

自分は終始ウルウルと涙腺が刺激されていた。その理由は端々に伝わるゲーマーへのリスペクトにある。これはグランツーリスモをプレイしている人間に限らず、ゲームに懸ける熱意を力強く全肯定してくれる。所詮遊びだとは言わせない、ゲームは夢と熱意に溢れた人生の一部であるということを一人のプロレーサーに成るという夢を叶えた主人公を通して描いていく。ゲームに人生を捧げるゲーマーの端くれとしては「好き」を肯定してくれて涙なしでは見れない。

ストーリーは王道のスポ根。負け犬たちのサクセス、親との軋轢、悪どいライバル。だが決してありふれたものにならず常に感動させてくれる要素を持ち合わせているので分かりやすさもありながら感動できる。ゲーマー出身特有の苦労というのはさほど描かれず、それよりもレーサーという世界の過酷さと危険さが顕著に描かれていた。何度もリセットできるゲームとは決定的に違う「肌身で感じる死と隣り合わせの現実」を叩きつけられていく。そこへアプローチすることでゲーマーではない観客にも分かりやすく単体のカーレース映画としても十分成立する物語となっていた。

そして胸熱なストーリーを一層ひきたたせるのは迫力のレースシーン。恐らくドローン撮影であろうサーキットを舐め回すように見せていくカメラワークは非常にダイナミック。マイケルベイのアンビュランスを彷彿とさせるが、あれよりも数段迫力あるドローン撮影だった。また、走行中の内部パーツを映す演出とそれからくる無骨な機械音が個人的にはドツボ。エンジン音も含めて最高のサウンドデザイン。ダイナミックさとは相反してリアルな臨場感を得られる。この緩急の付け方が素晴らしかった。

そして急に訪れる危険の演出も凄まじくて、その恐ろしさが身をもって体感したような感覚になる。ゲーム画面を彷彿とさせるようなカメラワークやVFXもあり、多種多様な演出を見せてくれるので兎に角見ていて飽きない。というかカッコ良すぎ。手に汗握りすぎるし。

キャストに関して、デビッドハーバーとジャイモン・フンスーの存在感は絶大で、出てくれば常に感動へと持っていく名優ぶりを発揮していた。素晴らしかった。


ゲーマー愛に溢れた素晴らしきスポ根映画。必見。エイリアンの新作やるとか第9地区の続編やるとかオリジナルSFやるとか色々と情報が出てはやらないが続いたニール・ブロムカンプ監督のやっとの大作だが、やはり期待を裏切らなかった。

経済格差の対立構造とか、危険というものの描き方はブロムカンプらしいリアルさがあった。

余談
ジャックは架空のキャラ(インスパイア元はアカデミーにいた開業医と言われている)、ダニーもダレンコックスという人物を基にしている。
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