ショウジ

瞳をとじてのショウジのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.8
ゆったりとした気分で観させてくれる作品。
じっくりと噛みしめるように観た。
人生に対して疲れ切ったように見えるミゲルもその実なかなかいい暮らしを送っているし、ひと所に留まってフィルムの管理をしているマックスの老後に対して「恐れも希望も抱かない」という姿勢も素敵。
その他の登場人物についても老いとの向き合い方がそれぞれ優しく描かれているので、歳を取っていくことに対してそんなに身構えなくてもいいんだなと感じさせられたし、彼らと同じくらいの年齢になったら本作をまた観たいと思った。
マックスが本当にいいキャラしてるので彼が登場するシーンと、友情を再築しているように感じられるミゲルとフリオが一緒に漆喰を塗るシーンが好きだった。

随所に差し込まれる歌と光の演出が素晴らしかったし、ひとつひとつの小道具も効いてたなあ…フリオの所持品の中に日本語入りのマッチ箱があって純粋な驚きもあったし。誰かに貰ったのか、とか、俳優として日本に行った時に持ち帰ってきたのか、とか想像するのも楽しい。

マックスが「映画で奇跡は起こせない」というようなことを言うけれど、ビクトル・エリセ自身は映画の奇跡を信じているからこそこの映画を作ったんじゃないかと思った。「私はアナよ」というセリフを重要なシーンで登場させるのも粋…
もう映画は作らないんじゃないかと思っていたので、新作を作ってくれて嬉しかったし、劇場で観られて本当によかった。
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