劇場で鑑賞。
時代とともに姿を変える映画とは何なのか。かつての映画黄金時代を通り過ぎた現在において、その問いへ向けて堂々と示す直球の回答が本作だ。
映画は作成時点での時間を閉じ込めているが、観客の時間は進んでいく。映画をみるという行為は、その閉じ込められた過去を現在の観客が直視することだ。閉じ込めた過去を過去のまま体験することはできず、現在の観客は映像の中の過去に逃げ込むことは許されない。映画を観るとき、観客は現在の瞳を通して自分の歴史と直面せざるを得ない。目を閉じて自分の中に逃げ込めば過去へと逃げ込めるが、目を開いて映画を観れば自分の人生と対峙することは避けられない。
そこには「ドライヤー亡きあと」にも通用する奇跡があるはずだという、堂々とした映画。
