netfilms

湖の女たちのnetfilmsのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
3.3
 今週はまず何よりも私が贔屓にしている吉田恵輔、白石和彌、大森立嗣という日本人監督の新作を丁寧に見守りたかったのだが、結果的に3人の監督の明暗ははっきりと分かれたと言っていい。今作が終わった後、どうしてこうなってしまったのかと頭を抱えてしまい、しばらく立ち上がれなかった。湖畔の介護施設で百歳の老人が殺される。西湖署の若手刑事・濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美佑(浅野忠信)はすぐに捜査を開始する。湖を舞台とする映画は、女性の性的な渇きのメタファーだと言ってもいい。施設の中から容疑者である松本(財前直見)を炙り出し、彼女が犯人だと決めて執拗な取り調べを行なうが、その陰で圭介は取り調べで出会った介護士・豊田佳代(松本まりか)に歪んだ支配欲を抱いてゆく。まぁ本当に前半部分の相関関係の説明が極めて下手で、事件のあらましも含め一向に綺麗な絵が見えなくて困った。ただ私がそれ以上に違和感を抱いたのは、演者たちの演技の決定的な質に尽きる。福士蒼汰の拙さは相変わらずこの人は成長しないなぁという月並みな感想なのだが、それに輪を掛けて浅野忠信の先輩刑事の演技が想像以上に酷く、監督はこれでOKを出したのかと久々に唖然としてしまった。

 今作の突拍子もない演技への違和感は、物語世界への没入を防いでおり、ショットのモンタージュもこれが正解であるかははっきりと疑わしい。緻密さに欠ける脚本はどうしてこの流れで731部隊にまで話が行くのかも不明瞭だ。そもそも市民の安全を守る警察側が、こんないい加減な捜査ぶりで観客は納得するのだろうか?組織におけるトキシック・マスキュリニティを担う浅野忠信のカミナリや錦鯉のツッコミを超えるあのはたき芸は果たしてアリなのかという疑問も残るし、それにストレスのゲージを超えてしまった主人公が豊田佳代にチクチクと性加害を繰り返す辺りが真に気持ち悪く、胸糞が悪かった。しかも性加害の内容も濱中圭介の真に気色悪いところは、彼女の羞恥心を出汁に使う様な居心地の悪さで、別の性加害に帰着しかねない。はっきり申し上げれば女性たちは男性たちのレイプ・ファンタジーの犠牲になった様にしか描かれておらず、彼女たちの自発的な性の解放はどこにも出て来ない。女性の方も男性に隷属的で、豊田佳代(松本まりか)も週刊誌記者・池田由季(福地桃子)もただ2人の刑事を喜ばせたようにしかこの脚本では明示されず、大森立嗣のあまりにも痛い昭和のハードボイルド幻想が露になった程度でしかない。どんなに蔑まれた役柄のオファーをされても、絶対に乳首だけは出さない松本まりかは今作でもやはり信念を曲げなかったが、今作で描かれた性表現に、言いようもない怒りを覚えた。
netfilms

netfilms