バナナ星

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のバナナ星のネタバレレビュー・内容・結末

2.7

このレビューはネタバレを含みます

戦時中の生活を知ることができるが、物語としてはなんとも。

戦争映画ということでそれ自体に価値があり、あまりマイナスなことを書きたくないが、1つの映画作品としては疑問点が多い。

・タイトルに納得感がない。丘に百合が咲き誇っていること、丘で印象的な会話があることから丘を強調したいのはわかるが…
・なぜタイムスリップしたのかが不明。ある程度のルール(洞窟で寝るとタイムスリップする、など)がないと違和感が残る。帰り方が唐突。タイムスリップさせる必要性はあったのか?
・彰から百合への距離の詰め方が強引で少し怖かった。時代もあるのか?こういう人が普通だったのか??
・彰と百合が惹かれ合う理由がわからなかった(理由を探すことが無粋?)。出会って1ヶ月も経っていないのに「愛してる」までなる?
・彰と百合の別れ方それでいいのー?!と思った。結構あっさり


特にグロいというか皮肉だと思ったシーン・構図が2つあった↓

①百合が警官に怒られるシーン
結局お鶴さんが、彰は特攻隊(生き神)だからと言って場を収めたが、これで良いのか?

戦争そのものに異を唱える百合

百合を「非国民」だと怒る警官

百合を助けたい特攻隊(生き神)の彰

という構造になるが、これでは「日本の戦時体制」の下で高位の特攻隊が権力でもって場を収めたということになる。
百合は現代人の目線から戦争反対を唱えているのに、結局戦争によって与えられた権威で仲裁しているという皮肉。

②現代の貧困問題を覆い隠している

シングルマザーで貧困、そのせいでクラスで浮いていたり進学を諦めたりしていた百合。現代の水準では「不幸な」子どもに見える。
しかし、タイムスリップして戦時中の生活を経験したことで、もっと「不幸な」人々を目の当たりにする。
現代に帰還後、母親に「幸せだよ」と伝え感動的なシーンを演出しているが、本当にそれで良いのだろうか。

言葉は悪いが、「下には下がいる」と思うことで現状に蓋をしているように見える。
もちろん、戦時中の生活には想像できないほどの苦しさがあるだろう。
それと比べれば今はとても恵まれた平和な日本になっている。
けれども、現に貧困やさまざまな問題で苦しむ人は沢山いる。
シングルマザーへの社会保障の不足や社会的な偏見を放置してはいけない。

下を見て頑張ろうとするのは悪いことではないが、現状を改善しないことの免罪符になってほしくはない。
バナナ星

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