アリー

ほつれるのアリーのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
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2023年9月8日新宿ピカデリー
前作に引き続き傑作。「福田村事件」とは全然違うけれど、同じように今年邦画ベスト10級である。
前作のレビューで、自分はこんなこと書いていた。
「この監督の次作を見てみたい。次はもうちょっと気持ちの良い映画にしてほしい。」
全然気持ちよくない。
前作は「わたし達はおとな」というタイトルで、大人になりきれない話だったが、本作は「嫌な大人」満載である。だから気持ちよくない。

この監督のすごさは、背景や気持ちをギリギリのところまでしか示さず、それを観客に推察させて、最後の「舞台」になだれ込む。最後は良い意味で「演劇」だと思った。なんか見ていてグワングワンきた。だから音のないエンドロールをボーッと見続けた。
演劇といいながら、すごくリアル。うちが家族関係が崩壊しているからわかるのか、とにかくリアルに感じた。不倫はないけど、相手に対するこの感じって何度も味わったよ。

門脇麦! 私にとっては「あのこは貴族」がすべてであったが、見事に変えてきた。こんな役できるんだという感じ。これまたリアルなんだよな。
黒木華はちょっと無駄使い。加藤監督、黒木主演の作品を見てみたい。オトコ2人もクズ具合好演。


音楽が鳴った途端に石橋英子ってわかってしまうのはどうなんだろう? 石橋英子大好きだが、ここはもっと別の人にした方がよかったんじゃないだろうか。あの音楽で車が走っていると「ドライブ・マイ・カー」っぽくなっちゃうし、ジム・オルークも参加しているので「658km、陽子の旅」っぽくもなってしまう。

グランピングから始まるけれど、濱口竜介の新作もグランピングじゃなかったっけ。
そういや「わたし達はおとな」主演の木竜麻生は「福田村事件」の記者役で出ていて、これもよかったな~。
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