アキ・カウリスマキ「労働者三部作」のうちの一作
カウリスマキ印の名物俳優であるマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンが初共演し
長編3作目、当時29歳にして監督の作風が既に確立されていたことが見て取れる記念碑的作品!
「俺に理由なんてない
あるのは名前とゴミ車の制服だ
虫歯と病んだ肝臓 慢性胃炎
いちいち理屈をこねる贅沢など
俺にはない」
くぅー、また情けなくてダンディな台詞いただきました!
カウリスマキさん!
たまんねぇよ!
リストラの腹いせに店から盗んだ手持ちサイズの金庫
それを開けるための道具を取りに行く
↓
ソファの上に投げ出される金庫と道具たち
(=開けられなかった)
↓
浜辺に場面転換して、ニカンデル(マッティ・ペロンパー)がイロナ(カティ・オウティネン)を押し倒してキスをする
↓
タバコを指に挟んだイロナの手のアップ
何でしょうねー、このカットのつなぎとか
シブくて可愛らしい
この空気感が独特なんですよね
ロックンロールの陽気な音色と無表情で佇むニカンデルのギャップも
好きだわぁ
風物詩ですね
役者が無表情なぶん、最後のイロナのニンマリ顔は効き目十分
ダブルデートをすっぽかしたイロナ
男らしく振舞おうと気にも留めていないフリをするニカンデル
怒ってほしいイロナ
そんなこんなでイロナに出て行かれて寝込むニカンデル…笑
素朴な恋愛模様が微笑ましい
翻訳の誤りがひとつ
ニカンデルがイロナを新婚旅行に誘うシーンで
イロナの「食べて行けるの?」という質問に対して
ニカンデルが英語で"Small potatoes"と答えます
字幕では「毎日イモだ」と訳していますが
これは慣用句で「些細な、取るに足らないこと」を意味します
「食べて行けるかどうかなんて、一緒にいられるならどうだっていいことだ」ということですな
毎日イモはシンドい
『オデッセイ』や『ニーチェの馬』か
流石にあれらほどの極限状態にはなりますまい
蛇足ですが、タバコが吸いたくなりますね