てる

パラダイスの夕暮れのてるのレビュー・感想・評価

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
3.5

アキ・カウリスマキの労働者三部作の一部作目。
正直、面白いのかどうかはわからない。評価されているし、尺が短いからなんとなく観てみた。二部作目の『真夜中の虹』を観たし、なんとなしに観てみた。
やっぱり、よくわからない。自主製作に毛の生えたような作品だと思う。

なんというか、全体的にとてももっさりした作品だ。どの人も感情を表に出さないので、感情移入ができない。物語の起伏はあるのだけど、登場人物が皆が皆、淡々としているので、淡々と物語が進んでいく。
恋愛の話しなわけなんだけど、いまいち伝わらない。二人のデートのシーンも女の方が不満を抱いているようだけど、何が良くて、何が悪かったのか。退屈なのか楽しいのかよくわからない。
低所得の労働者の恋愛を描いているので、共感できるところはある。友人? からお金を借りて、高めなレストランで食事をし、ホテルに泊まる。それは彼にとっては背伸びをしたとても贅沢なデートなのに、いまいち女側の反応が薄い。
でも、なんだかんだとその男を気に入っている女。服屋の店長が悪くて、ごみ収集車の男のどこがいいのかわからない。むっつりして、もっさりしたこの男が、私はどうにも好きになれない。
逆もまた然りで、この男が、この女のどこが好きなのかわからない。美人ちゃ美人だけど、一緒にいても退屈そうなこの女をどうにも好きになれない。

じゃあ、つまらないから観るのを止めようとならないから不思議だ。どこに魅力があるのか説明するのは、私には難しい。
観たことがない海外のロケーションがよかったのかもしれない。フィンランドの低所得者の日常が切り抜かれたこの映像の風景、店、街並みが魅力的だったのかもしれない。
全然好きになれないこの登場人物の行く末が気になるのかもしれない。もっさりしていて、何を考えているのかわからないこの二人が妙に気になっているのかもしれない。

結果的に、この作品がつまらなかったとは言えないのが不思議だ。
数ヶ月後にはタイトルすら忘れていそうだ。でも、この作品のシーンを時たま思い出し、語りたくなるのだろう。
たぶん何年経とうが私にはこの作品の魅力を言語化することはできない。しかし、不思議な魅力があって、この監督のファンがいるのも妙に納得できる。
もう何本か観てみようかな。
てる

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