垂直落下式サミング

ブレイド3の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ブレイド3(2004年製作の映画)
4.0
三作目にしてついに、すべてのバンパイアの親玉である「吸血鬼ドラキュラ」が目覚める。吸血鬼たちの力は、血統で決まるようだ。一作目に出てきた支配階層の貴族バンパイアたちは、始祖であるドラキュラ伯爵の血が濃ければ濃いほど、地位が高く種としても強いのだと思われる。
この設定は、去年『鬼滅の刃』を読んだので、すんなりと呑み込めた。より強い鬼から血を分けてもらったやつほど強くなって、始祖から直で血を与えられるのは、力と実績を認められたほんの一握りの強者だけって、そういうバンパイアハンター物語あるあるを身近な一般教養レベルの知識として共有していたから、吸血鬼社会の中にあるカースト制みたいなのはイメージしやすかった。吾峠呼世晴先生に感謝。一作目に出てきた血が降ってくるクラブの奴らとか、くそ底辺だったのね。イジメちゃかわいそうだよ。
これの前の第2作目は、半人半妖のブレイドが敵から一時休戦を申し込まれ、科学の力で産み出された新種「死神族」の駆除を依頼されるストーリーだった。人にも吸血鬼にも属せない半端者なデイウォーカーが、仲間の吸血鬼たちから忌み嫌われる存在の死神族を倒すために、敵と共闘することになる。群れからはぐれたつまはじきものが、体制側について似た境遇の同族を殺す。それが最善とはいえ、もの悲しさを残す物語だった。
最後の敵は、4000年の眠りから復活したドラキュラ。圧倒的な正統派。すべての悲しみの元凶はコイツだ!相手にとって不足なし。孤高のヒーローの雄姿を見届けよ!
開幕から、主演ウェズリースナイプスが魅力に溢れる。銀の刀や二挺拳銃を駆使して、バッタバッタと敵をなぎ倒す! 階段を駆け上がるだけのシーンなのに、こんなに面白いなんてっ!今の映画だとあんまりない感覚で、派手なシーンじゃないのに、彼が動いているだけでどんどんテンションが上がっていく。
さらに、敵を倒したあとにおどけた顔をしてみたり、車でひき殺した敵の血を落とすためにワイパーを動かしたり、倒した敵の頭蓋骨をダメ押しで躊躇なく踏み砕く!この残虐ユーモアがブレイドの真骨頂よ。
今回は、ヴァンパイア集団を追跡中に、敵の罠にハマって人間を殺害し、その模様をTVで放映され、殺人鬼として世論や警察を敵に回してしまう。ついに相棒を殺されFBIにもパクられるが、取り調べ中に何者かが助けにやって来て…。
この絶体絶命の窮地を助けてもらった相手にも、偉そうに説教垂れるのが一匹狼ブレイドイズム。新たに仲間を率いて大暴れ。ここで、後にデッドプールをやるライアン・レイノルズが出てきて、ポメラニアンにいじめられるなどして、ギャグキャラおしゃべり君として頭角をあらわしはじめていた。
弓使いな娘ウィスラーの服装が大好っき。女性は明日から全人類あの服!っていう法律作ってくれるんなら、売国奴になるくらいワケないね。パンクさと機能性の二天一流。10年以上前に、初期のホットトイズを紹介してるホビー雑誌を病院の待合室で読んだことがあるんだけれど、バットマンやロボコップそっちのけで、うっとりだったもんな。どうせフィギュア買うなら、オッサンよりも女の子がいいし。
お気に入りは、ドラキュラ伯爵の人物描写。現代の我が末裔は、なんと弱っちく脆いのだ嘆かわしいと叱責しつつも、隠居の身の大おじいちゃんに助けを求めてきた曾々々々々孫くらいの子孫の頼みも断りきれずに、ブレイド抹殺に手を貸すことになる。
最終決戦の最後の最後。今まではベタな悪漢としてしか描かれていなかったドラキュラ伯爵が、ほんの欠片ほどの人間味をこぼすことで、人となりがかわるところもいい。
孤独な王の悲しみを背負ったキャラクターであったようで、最後ブレイドたちに倒されたときは彼を認めるような発言をする。始祖である自分を倒した強者にこそ種族の未来を託すにふさわしいと、怪物的ではあるものの人間としてのドレイクの本心はここにあるようだ。我が子らよ、栄えあれと。
ストレートな悪漢っぷりも、僕は好きでした。どうやって採算がとれてんのかわかんないバンパイア雑貨屋の店員をしている女の子を椅子に力任せに押し倒すところとか、暗闇のなか床に倒れた仲間の血の匂いをかぎとって恐怖に怯える視覚障害者の女博士をなぶり殺すところとか、とってもえっちい…。
ブレイドが捕まったときに精神鑑定をした精神科医が、「バンパイアの吸血はある種の性的欲求によるものだ」と言うから、ずっとドラキュラ様の活躍をそういう目でみてしまっていたから、不敬をお詫び申し上げます。
シリーズ三作ともしっかりと名作。肉弾戦とコンピューターグラフィック。迷信のファンタジーと科学的な合理性。相反するふたつがいい塩梅で交雑。物語を構成する要素と、半人間で半吸血鬼のハイブリッドという主人公のアイデンティティが、しっかりと重なっているという…。抜け目ないのか、たまたまなのか、なんにしても今みても古びない魅力を持ったアクション映画の歴史に残るシリーズなのは、間違いないでしょう。