ゆず

哀れなるものたちのゆずのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

あざやかな色彩、絵画のような映像、ファンタジーの混ざった不思議な表現、それぞれにだめな男たち。
母子一体となったベラという不思議な人間の冒険と成長。
終始強烈な皮肉に彩られた内容で、色々と考えさせられる映画……

ではあったのですが。
マーク・ラファロの演じるダンカンのダメっぷりがツボに入りすぎてしまって、その記憶ばかりが強く残ってしまっている。
爆速でフラグたてて後は一直線に堕ちていくじゃん……w
ベラを思い通りにしようとしては失敗し、酒とギャンブルに溺れてメンタルをやられていく。
やることなすこと愚か。
出てくるたびに笑った笑った……w

大人の体に詰め込まれた、何も知らない真っさらな幼児の目で見る世界。
常識はない。羞恥心もない。
偏見もないし恐れもない。
早々に性的な表現がぶっこまれて驚いてしまったが、体は大人なんだものな~……(幸せになる方法見つけた!って無邪気に報告してくるの笑ってしまった)。

快楽=幸せである、とせっせとそればかりを求めていた彼女が、
知識を得、世界を見て、とんでもないスピードで成長していく。
ベラの“幼さ”の表現、演技が見事なのはもちろんのこと、
服装も、ふくらんだ袖とかのボリュームたっぷりのトップス+薄手のボトムス(ほぼ下着みたいなのとか)みたいな衣装多くておもろかった。
あれもアンバランスさや不安定さ出してるのかな(といってもそれすら着こなしてしまっている感のあるエマ・ストーン)
娼館で働く流れになるのは少し驚きもあったけど、
ベラにとってはほんっとに、短い時間で得意なことで必要なお金が稼げる、でしかないんだろなぁ。

服装もあるき方も、最後ゴッドに会いに戻ってくる時にはとても美しくなっていて、成長ぶりに謎の感動を覚えてる。
あと結婚しようとしてるシーンでのヴェール(おそらく)の付け方が直で顔を覆って頭の後ろで縛る? みたいな付け方してて、らしいというかなんというか。

最後、娼館で一緒だった女性も一緒に暮らしてるのかな~。結局マックスとは結婚したのかな~? 戸籍上はまだ既婚者のままなんじゃないのかな……とか考えてしまったが、まぁそのへんはどうでもいいか。
マックスも欠点だらけの男ではあるのだろうけど、アバズレ扱いしなかったトコはダントツで好感持てる。君の体だから、って。自称も他称もヤリチンなのに逆の立場になった途端激昂した誰かさんとは大違い。

元夫は恐らく失踪扱いにでもなってるんだろうか。
使用人たちからも嫌われてたから、
退職金はずんであげてれば、誰も警察に言いそうもないよな……w
最も暴力性の高かった男がヤギ脳移植されてるの笑ったな。
草食に生まれ変わっちゃったね。元の脳はどうしたんだろう~。

そういえばゴッドの脳も移植しちゃうかと思ったけど、
そうならなくてよかったな……(まぁ脳にも寿命はあるだろうが)
憎しみでいっぱいになりそう、と言われて、ゴッドがベラへの説得を諦めたこと、私は結構意外だったんだけれど。
一緒に見た友人が「自分が父親のこと憎んでたからかもねぇ」といってて、なるほどなぁ~と思った帰り道。
女性像の方がよりファンタジーに感じられたのは、自分が女だからなのか、ベラの存在がファンタジーなせいなのか、監督が男という先入観なのか。

ヨルゴス・ランティモス監督の映画でこんなに笑うとは全く思ってなかったな(笑っちゃっていいのか謎な場面も多いけど)。
映像が綺麗で好きなシーンも多かった気がする。
世界観もファンタジーのようなレトロフューチャーのような……
すごく不思議な映画だったな~。
ゆず

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